
モードとイーニッドは、とうぜん、いちばん頼みやすい人たちでした。ところが、ふたりにも、きっぱりことわられてしまったのです。
「頭がおかしくなったんじゃない、ミルドレッド」モードは、ぴしゃりといいました。「もしみつかったら、わたしたちふたりとも、HBに殺されちゃうわよ。それはともかく、なんのために、そんなことするの? つまりは、わたしなら、がまんしてベッドにいるわ。帰ってきたら、イーニッドとわたしがハロウィーンのことは、全部話してあげるってば」
「モード、聞いて」ミルドレッドは必死です。「信じるの、むずかしいってわかっているけど、池にいるカエルは、本当に魔法使いなのよ。ほかの魔法使いにしか、魔法がとけないの。魔女じゃだめなのよ。わたしといれかわるのがいやだったら、どうかカエルだけでも連れてって、長老に助けてくれって、頼んでもらえない? お願いよ」
「とんでもない!」モードとイーニッドは、声をそろえていいました。
「あのねえ、ミルドレッド」イーニッドが、やさしくいいました。「そりゃあ、カエルになっていたあいだ、いろいろつらかったと思うよ。実験室では、危機一髪だったし、ほかのことでも、なんやかやとね。でも、ちょっと、カエルや池のことを、気にしすぎじゃない? なんか、とりつかれてるみたいだよ。モードとわたし、あんたが、なんにもないただの水にむかって、おしゃべりしてるのを、見たことあるけどね。やっぱり、ひとばん、ゆっくりベッドで休むっていうのも、今のあんたにとっては、なかなか、いいことだよ」
ミルドレッドは、すっかり絶望し窩輪報價て引きさがりました。これ以上、何かいっても、むだなようです。でも、ほかの友だちをあてにしても、モードやイーニッドでさえ、ミルドレッドの頭がおかしくなったと思っているのです。いったいだれが、助けてくれたりするでしょう。いよいよ、最後の手段を実行するかしかないようでした。だれかを誘かいするのです。ミルドレッドは、考えただけでも、ぞっとしました。
ハロウィーンの日の朝がきました。きょう一日、みんなは、いちばんいい服にアイロンをかけたり、ほうき飛行やおまじないの練習をしてすごすのです。ミルドレッドとエセルは、悲しい気持ちで、自分の席にこしかけていました。みんなのにぎわいから、とり残されてしまったような気分です。
その日の午後、夕暮れにさしかかるころ、ミルドレッドは、そっと階だんをおりて、たそがれの校庭に出ていきました。池に急いで、水草の間をのぞいて、友だちをさがしました。
「アルジェノンさん。出てきてください。お話があるんです」
暗い水面は、静まりかえったままでしたが、しばらくすると、さざ波がおこって、潜望鏡のような緑のふたつの目が、水の中からのぞきました。
「ああ、アルジェノンさん!」ミルドレッドは、ほっとしました。カエルが、いつものように、石の下にかくれてしまう前に、水の中に、すばやく手をつっこんで、カエルをすくいあげました。カエルは、つかまえられたのを、少しもよろこんでいませんでした。ミルドレッドが、どこに行こうとしているのかを話して、なだめようとしても、死にものぐるいでさわぎ立て、ミルドレッドを疑っているように見えます。ミルドレッドは、カエルを、そっとポケットにおさめて、階だんをかけあがりました。へやに着いたミルドレッドは、この旅行のために、前から用意しておいた箱をとりだして、カエルをの中に移しました。息が苦しくならないように、ふたには、あなが、あけてあります。
「しばらくそこで、がまんしてくださいね辦公室屏風」ミルドレッドは、ひもで、箱をしばりながらいいました。「心配いりませんよ。きっと、何もかも、うまくいきます」
つぎにやることは、誘かいしく『いけにえ』を、さがすことです。もちろん、いちばんかんたんな方法は、だれかを魔法で小さな動物(たとえば、カエルとかヘビとか)にかえてしまって、もどってくるまで、箱の中にでも、閉じこめておくことです。でも、正直なところミルドレッドは、この学校の中で、動物の魔法を使うのは、もうこりごり、と思っていました。一生かかって使えるだけ、使ったような気がしていましたから。それに、魔法を使ったりとかいう、まわりくどい方法をとらずに、ただ閉じこめておくだけのほうが、まだおだやかなように思えます。
ミルドレッドがへやを出ると、ちょうど三年生が、ネコをだいて階だんを、おりてくるのに出あいました。名前は、グリセルダ・ブラックウッドといいます。
「ちょっと待って!」ミルドレッドが、さけびました。「えーと、もしよかったら、助けてくれないかしら?」
「いったいなあに?」と、グリセルダ。「どうしたの、ミルド