と緊張して言っ

ガリオンがふりかえると、ばかでかい翼の白い海鳥がまたしても第一|斜檣《しゃしょう》のすぐ先にいるの
が見えた。昼が近づくにつれ、しだいに紫虛擬辦公室色を濃くしてきた西方の層雲を背に、真っ白な鳥がこの世のものならぬ白い光に輝いているように見える。
「まったく奇妙だな」ガリオンは言った。
「あいつがなにをたくらんでいるのか知りたいよ」シルクは言った。「おれは下へ行く。これ以上あいつを見たくないんだ」かれはガリオンの手を握り、わざと荒っぽく言った。「おもしろかっ
たよ。気をつけてな」
「行かなくてもいいじゃないか」
「おまえに会おうと列を作って待ってる他のみんなに席を譲らなくちゃな、陛下」シルクはにやりとした。「きょうはおまえにとって気の滅入る日になるぜ。ベルディンがもうエールの樽を見つ
けたかどうかつきとめてくる」陽気に手をふると、小男はくるりと背を向けて下に通じる階段のほうへ歩き去った。
シルクの予見はピタリとあたった。ガリオンの仲間がひとり、またひとりと甲板にあがってきては別れを告げた。みんながみんな死ぬのは自分だと固くPretty Renew 冷靜期信じていた。総じてその日はきわめて陰
鬱な日だった。
あたりが暗くなってきたころ、自作の墓碑名を語る最後のひとりが立ち去った。ガリオンは手すりにもたれて船の後方でちらちら光る航跡をながめた。
「いやな一日だった、だろう?」またシルクだった。
「ひどいもんさ。ベルディンはエールを見つけたのか?」
「あれはやめといたほうがいい。あしたのために鋭気を養っておく必要があるからな。おれがここへきたのは、おまえが仲間に注ぎこまれた憂鬱な気分のせいで溺死しようという気になってやし
ないかどうか見るためなんだ」シルクは眉をひそめた。「あれはなんだ?」
「あれって?」
「あのすごい物音さ」かれは船首のほうを見た。「あれだ」た。
紫色の空が日没とともにほとんど真っ黒に変わっていた。雲の間に輝く夕日の黒ずんだ赤い光が、黒い空をところどころ染めている。水平線の下のあたりは錆色にぼやけ、まるで泡だつ波の白
いネックレスをつけているように見えた。
クレスカ船長が、ほとんど陸と縁のない人間特有のゆれるような歩きかたで、こちらへやってきた。「あれですぜ」とかれらに言った。「あれが例の珊瑚礁だ」
ガリオンは〈もはや存在しない場所〉に目をこらした。思考と感情がたがいにせめぎあっていた。
そのとき、アホウドリが異様な鳴き声をあげた。まるで勝利の声のように聞こえた。大きな真珠色の鳥は翼を一度だけかたむけると、静止しているように見える飛びかたでコリムのほうへ飛び
去った。
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