せるというアイデアは、きわめつけの愚行のように思われた。
「この計画については、カンテン=ファギンも熱心に勧めてくれているんでず」ケプラーが口を開いた。笑みを浮かべていたものの、〈サンダイバー計画〉の責任者の目は、まっ赤に充血していた。目の下に隈ができているのは、なにか心労でもかかえているのだろうか。彼はジェイコブの手を両手で押し包むようにしてぎゅっと握りしめ、話をつづけた。よく通る声だったが、震えは隠しきれていなかった。
「わたしたちは、ごく短期間の滞在予定で地球へやってきました。ファギンがきっとあなたを説き伏せて、引き会わせてくれるだろうと期待していましたので。あなたには、ぜひともわが水星基地へおいでいただいて、その豊かな種族間コンタクトの経験を生かしてもらいたく思います」
ジェイコブは目を丸くした。よしてくれよ、またしてもこの手の話か、この葉っぱの化物め!できることなら、ファギンに向きなおってにらみつけてやりたいところだったが、いくら儀式ぱらない人間同士の会話とはいえ、少しは話くらいしなけれぱ失礼にあたる。それにしても、ごたいそうな話じゃないか!
ドクター・マーティンは、にっこりと魅力的な笑顔を浮かべて手を差しのべたが、握手をするとき、少し退屈そうなようすがうかがえた。
ジェイコブは、あまり興味がありそうには聞こえない口調で、超心理学が太陽物理学となんの関係があるのか訊ねてみようと思ったが、その機会はファギンにつぶされてしまった。
「非公式な人閻同士の会話においては、一般的に、間があいたときに口をはさんでもいいと考えられているようだから、そうさせてもらうよ。ほかにもうひとり、紹介しなければいけない人物がいるのでね」
ああ、そうだったな、とジェイコブは思った。つぎのETがそんなに神経質なやつじゃないといいんだが。彼は右手の、極彩色のモザイクを施された壁のそばに立っている、トカゲ型の地球外生物に向きなおった。それはクッションから立ちあかっており、いまは六本避孕 藥足で歩いて、みんなのほうに向かってきていた。体長は一メートルに満たず、体高は二十センチほどだ。そいつはジェイコブには見向きもせずに彼のすぐ右を通りすぎると