すべての時代
大自然のあらゆる秘密を探究したという。
あるものは他の星から訪れ、そのなかには宇宙そのものと齢《よわい》を同じくするものもわずかにいた。残りのものは、われわれの生命進化の最初の単細胞が遙か太古のものであるように、われわれの生命進化の最初の単細胞が存在するより遙か太古に地球上に存在した微生物から急速に発生したのだった。何十億年もの時の広がりや、他の銀河や宇宙との繋《つなが》りのことも語られている。事実、この時間概念のように、人間の観念でうけいれられるものは何一つとしてない。
しかし伝承や印象のほとんどは、比較的後の時代の種族、科学に知られうるどんな生命体にも似ていない、奇妙で複雑な姿をした、人類が出現するわずか五千万年まえまで生息していた種族をとりあつかっている。この種族は、時間の秘密をつきとめた唯一の種族であるがゆえに、最も偉大な種族であるとされている。
この種族は、何百万年もの時の障壁をよぎってさえ、自らを過去や未来に投影し、あらゆる時代の知識を学びとれる強烈な精神力によって、地球上で既に知られているか、あるいはいずれ知られるようになる、すべてのことを習得していた。預言者の伝説は、人間の神話に見いだせるものも含め、ことごとくこの種族のなしとげたことから発している。
この種族の広大な図書室には、地球の記録をすべて収める絵入りの書物があった――既に存在しているすべての種、今後存在するはずのすべての種について、その来歴と生態図が、それぞれの種の芸術、業績、言語、心理の完全な記録とともにとどめられている書物があった。
永劫の歳月にわたる知識を用いて、〈大いなる種族〉は、、すべての生命体から、自分たちの性質や立場に適する、思想、芸術、方法論を選択した。通常の感覚能力の外部に、精神をいわば投影することによって獲得される過去の知識は、未来の知識に比べて、収集するのが困難だった。
未来の知識を入手する場合、その作業は簡単であり、また物質的でもあった。適当な機械の助けをかりて、精神は、待望の時代に近づくまで、ぼんやりした超感覚的な道のりを感じながら、時間の先へと自らを投影する。そして予備的な吟味をおこなった後、その時代の生命体のなかで最も高度な種を代表する、見いだしうるかぎり最良の有機体を捕える。有機体の脳に入りこみ、脳のなかで自己の精神波を生じさせる。一方、追いだされた精神は追いだした精神の時代へ移され、逆転処置がとられるまで追いだした精神の体内にそのままとどまることになる。未来の有機体の体に投影された精神は、体つきを等しくする種族の一員となりすまし、選んだ時代から学びとれるもののすべてと、その時代に蓄積された情報と技術をできるだけ早く習得する。
その間、追いだした精神の時代と体内に